イコライザー THE FINAL

デンゼル・ワシントン扮する元DIAの特殊工作員だったおっさんが市井の人々を守るために悪人たちを皆殺しにしていく人気シリーズ第3弾。タイトルに「THE FINAL」と付いてますが原題は「3」となっておりなんだか微妙に齟齬を感じます。っていうか『ジョン・ウィック』のときも思ったんですが、日本語タイトルになんかかっこつけた英題付けるのやめません?意味が捻じ曲がる可能性もありますし増えすぎて飽和状態になってますよ。元のままでぜんぜん良いと思うんですが。
それはともかくイコライザーですが、私が観ていて最も惹かれたのは「影」を象徴的に映し出した撮影です。前作でもその薄暗くシックな撮影&照明は印象的でしたが、今作はそれがさらにレベルアップ。それもそのはず、今作の撮影監督は『イングロリアス・バスターズ』や『ヒューゴの不思議な発明』や『ヘイトフル・エイト』で美しく印象的な画面作りをしてきたロバート・リチャードソンなのです。『イコライザー THE FINAL』の舞台はイタリアのシチリア島となりますが、街の景観や、夜の闇、マッコールの容赦ない暗殺場面など、そのどれもが「影」を濃く、非常に濃く映しており、質の高く美しい映像を見せてくれます。このため残虐なシーンの多い本作ですが、どの場面もアート性を感じる出来になっており、マッコールの寡黙な雰囲気と相まって重厚感の強い作品になっていました。
にしても悪漢どもを数秒間で瞬殺するマッコールの能力が凄まじい。過激な描写も一気に増えて豊富なバリエーションで敵をぶっ殺していきます。もはや「正義の使者」というよりも「怪物」と言った印象に近く、一度彼に「敵認定」されたが最後あとはもう無残に殺られるのを待つのみです。演出的にはホラーみのあるところが多く、「マッコール=殺人鬼」として手のつけようのない怪物が登場した感が音楽や撮り方からも強調されていました。なので観ていて「胸がすく」というよりかは、「マッコール恐ええ!」という感情の方が私は強かったな。だって銃を口の中に突っ込んでそのまま貫通させ、もう一人の敵を撃ち殺したり、執拗なほど心臓をナイフで突き刺しまくったり、何故か切り落とした首を元の位置に戻したり、どう考えても「恐がらせるためにやってんだろそれ」っていう残虐さがあるんだもん。
一応マッコールの物語はこれにて終着点ということらしいので、このシチリア島が彼にとって”安住の地”という形で幕を閉じますが、え、普通にあんな平気で人殺せる(しかも無駄に残酷に)人が近くに居たら恐くないですか?という気持ちが。でもシチリア島の人たちは広い心で彼のことを受け入れてるようでしたね。さすがは『ゴッドファーザー』の地、これくらいはもーまんたいってことですか。
とはいえこれがマッコールという”心に傷を持った男”が平穏の地を得る物語だったとするならば、あのホームセンターから始まった彼の暴力に満ちた日々はここにおいてようやく安息を得たといえるでしょう。その意味では「怪物が居場所を得る」話だったとも私には見え、もう二度と彼の安らかな日々が壊されないことを願ってやみません(だって「敵」がかわいそうだもんね)。
もし次作があるとするならそうですね、『ジョン・ウィック VS ロバート・マッコール』が私は観たいです。どっちが強いかなあ、結構どっこいだと思うんですが、配給さん、こんな映画はどうでっしゃろ。