『The Last of Us Part II Remastered』クリアした

『ラストオブアス』シリーズはハードが変わるたびに、そしてリマスター版が出るたびにやってまして、今回プレイしたこの版は『ラストオブアスPart II』のリマスター版なのだ。

 

つうわけでn回目のプレイですが、ひと通り終わりましたのでレビューです。なんか書いていたらやたらと長くなってしまったな……。好きな作品のこととなると饒舌になるのはオタクのサガか。

 

んで、まずは本編をひと通りプレイ。発売から4年経つゲームですが、やはりゲーム部分におけるアクションの作り込みが凄まじく、不自然なモーションはほぼありません。ハードがPS5に移行したことでグラフィックはさらに向上。人物も背景も美しいです。あとコントローラーが最新のものに変わったことで、振動がさらにダイレクトに、繊細に伝わるようになっており、臨場感は増し増しです。

 

ストーリーに関しては発売当初賛否を巻き起こしましたが、個人的には肯定派です。いや、というか肯定もなにも、前作の"続き"として、エリーを主人公にするのなら"彼"があのような運命を辿るのはむしろ当然なので、そもそもその点はあまり問題だと思っていません。アビーというキャラクターにヘイトが集まることも、制作サイドは企画の時点で大方予想していたようですし。ただ、「もし自分が続編を作るなら」という妄想をしたこともあって、例えばエリーとアビーを操作する順番を変えたりとか、ふたりの勢力とは無関係な第三者の視点から同行を見つめるとか、もっと細かい点でも「ここはもっと短くしていい、もっと丁寧に描いた方がいい」と思う場面は正直あります。その上で、これを「完成系」として世に出したのは、ゲームを作る上で、私には想像もできないような苦労がたくさんあった結果でしょうからこれが正しい続編なのだとは思ってます。

 

本作の開発の模様を追った2時間のドキュメンタリー映像『「Grounded II: Making The Last of Us Part II」』(YouTubeでも視聴可能)では、ムービーシーンを撮影する様子、ゲーム部分をいかにスムーズな流れに見せるか、難易度の調整など、その裏側を色々見れて興味深いです。なにしろ試写会のムービーがどれだけ重要なのか、あるいはディレクターであるニール・ドラッグマンがどう指揮を取っていたのか、脚本家の苦悩といった、ゲームをやっただけでは知り得ない情報がてんこ盛りなので。中でも発売が2020年のコロナ禍と重なってしまったことに加えて、内容に不満だった人から殺害予告まで届いた状況までしっかりと映像に組み込んでおり、それらと向き合う制作者たちの姿は胸を打ちます。

 

そしてこのリマスター版では、その膨大なムービーシーン全てにニール・ドラッグマンおよび演者たちのオーディオコメンタリーが付いていて、日本語字幕で聞けるようにもなっているという豪華な仕様となっています。シーンごとにどのような想いを込め、どこが難しかったのか。どの部分が気に入っているのかなどを解説しており、ファンとしては満足度高めの追加コンテンツでした。てかレブって元々死ぬ予定だったんだ。それが製作の過程で変更になったんだと。こういう裏話もいいですねえ。

 

音声解説を聞いていて感じたのは、ニール・ドラッグマンがこのゲームに込めた想いでして、どのキャラクターにも「大切な人」がおり、その誰かのために戦っているのだということがわかります。そこにはそれぞれの愛があり、しかし同時にその執着が憎しみを生み、報復は報復を呼び、結果として大きな代償を払うこととなる。私はラストオブアスの映画的な側面ーー映像作家であるニール・ドラッグマンのことを信頼していて、特に台詞よりも「目線」や「仕草」や「象徴的なシンボル」や「繰り返し」や「反転」によってテーマを語る巧さを気に入っています。そのことを、この音声解説で改めて実感した気がしました。全部で5〜6時間あるので、観終わるのにまあまあかかるけれど、「ゲームのオーディオコメンタリー」って特典自体が珍しいし、それだけムービーに自信があったのだろうな感じます。やはりラスアスは、"観る"ことに特化した作品だなあ。

そこには、"人間"を描くことで、ゲームというメディアをさらに一段階上の文化へと押し上げようとするドラッグマンの理想も垣間見え、そういうところが私の心をグッと掴んでくる。ただね、こうしてムービーシーンだけひたすら観てると、思った以上に「感染者」が出てくるシーンが少なく感じたので、もっともっと感染者が登場するシーンを増やしていれば、否定的な意見の人の気持ちも和らいだのではないかと思うんですよねえ(関係ないって)。

 

その他「新しい”未公開ステージ”とその解説」では本編では諸事情により組み込むことが出来なかったステージを実際にプレイできるようになっており、ここでも音声解説とともに制作者の考えを知ることができる。こういう追加コンテンツは、ある程度売れた作品のみができることなので、「プレイできるメイキング」として新しさがあり、実際すごく良かった。

 

さて、おそらくこのリマスター版で特に目玉となる追加要素は「NO RETURN」と言われるアクションに重きを置いたモードだろう。エリーをはじめとする本編で登場した様々なキャラクターを操作しながらそれぞれのステージを攻略し、最後のボス戦を目指すこのモードは、さながら「ラスアス版不思議のダンジョン」といったところ。タイトルどおりやり直しは効かず、一度死んだらそれまで集めたアイテム全てが失われ、引き継がれる要素は何一つない。敵の猛攻に耐え、その場その場で臨機応変に戦術を変え立ち回ることが要求されるため、本編をクリアしたあとでないと攻略は難しいだろう。というか私にはかなり難しかった。ひと通りプレイして全てのキャラを出現させ、まずはブローターを倒すまでは出来たのでとりあえず満足したのだけど、それまでいったい何度死んだことか。でもハマる。相当ハマります。本編とは違ったアクションをせざるおえなくなるので緊張感、やりごたえがすごく、アドレナリン出まくってるのを感じながら遊びました。

 

「菌」が蔓延し、荒廃してから何年も経った世界観、「感染者」たちの恐ろしくグロテスクで美しいデザイン、それらに立ち向かいながら旅をする臨場感。手を抜くことなく、批判されることがわかっていながら製作されたこのゲームには作り手としての矜持がある。

 

私が当時このゲームをクリアしたとき思ったのは、後年になって評価されるタイプのゲームだろうなあということで、プレイを終えたばかりの人(プレイしないで評価や動画のみで悪口を言ってる人もたくさんいた気がするけど)からはヘイトが集まりすぎて、まともな評価はなかなかされにくい気がしていた。2024年現在、このゲームを再びじっくりやってみると、「憎しみの連鎖」というテーマは、現在の世界情勢を鑑みて、より重みを増しているように思える。制作者はゲームを通して世界と向き合い、私たちプレイヤーにも問いかけているのだ。現実の在り方について。語りかける声が聞こえるだろう。「現実は常に"グレー"なのだ」というその声が。

だからこのゲームは心に響くのだ。

漫画が好きで、宇宙開発が好きで、恐竜が好きなエリー。そして彼女と表裏一体の存在であるアビー。彼女たちが旅を通して何を失い、何を"得た"のか。私たちはこの物語から何を"受け取る"のか、愛と憎しみについて語り切ったこのゲームは間違いなく後世に語り継がれるべき名作だ。

 

この『ラストオブアスPart2』を元に製作されるドラマ版はどんな作品になるのだろう。楽しみだ。