高野秀行『イラク水滸伝』感想

ベテランのノンフィクション作家である高野秀行が次なる「秘境」として選んだ場所はイラクにある謎の巨大湿地帯「アフワール」だ。ティグリス川とユーフラテス川に挟まれた場所にあるこの湿地帯は、世界4大文明の一つメソポタミア文明の発祥地といわれており、 入り組んだ水路と、独自の文化で形成された、日本人にはなじみの薄い地域である。古代宗教「マンダ教」を信奉する教徒たち、フセイン時代に湿地帯でゲリラ活動を行い政府軍と戦った「湿地の王」、移動手段である「舟」を手に入れる際の奮闘や、謎に包まれた「アラブ布」をめぐる旅などなど、ベールに包まれた「異国」の構造や魅力を平易な文章で綴り、なにげない風景を捉えることで、私たちにとってその場所が「異国」ではなく「身近な場所」であることを感じさせる試み。それがこの『イラク水滸伝』なのだ。
ルポルタージュとしてとても面白く、イラク文化について知る上で学術的な価値も高い本に仕上がっているので、これ系のノンフィクションが好きな人ならみんなにおすすめしたい。